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カケルセカイ

2016.03.10 21:50 |カテゴリ:短編コメント(0)

 下の記事の画像がアレなんで小説を追加。(確か)4年前の作品。授業で書いた作品なので頑張って探せば見つかるかも。特に修正もせず、そのまま載せます。
 SF。世界観は自分でも気にっており、色々広げられそうな可能性を残して結局広げませんでした(笑)

(2400文字程度)

カケルセカイ


 寝ている時に自分の望んだ夢を見られる。
 それが男の発明品だった。

 脳科学の知識を応用したこの発明品は、製作コストの都合、高値であるが、中流階級以上には爆発的に売れた。著名な政治家やスポーツ選手が、テレビを通じてこの発明の良さを全国に発信してくれたのが大きな要因だろう。おかげで、男は裕福になり、また、コスト削減のための研究に乗り出すこともできた。

 男には愛する女がいた。男が科学者として駆け出しの頃から彼女は男を支えていた。研究は結果がすべてであり、結果が出ないうちは誰からも認められない。男も例外ではない。何年もの間、男は評価されることなく研究を続けてきたわけだが、「好きな夢を見られる装置」という一つの結果を出せたのは、ひとえに彼女のおかげだ。だから、男は研究が一段落したら、しばらくの間、研究に費やす時間を彼女に捧げようと思った。

 装置の仕組みは簡単だ。寝る前に見たい夢を想像する。それを装置が読み取り、人が眠りに就いたら脳に働きかけ、その夢を見るように促す。イメージが強ければ強いほど、夢の再現率も増す。
 ちょっとした応用も可能で、「熟睡している自分」を想像すれば、深い眠りが約束される。これは、装置が脳に対して熟睡するように働きかけているのである。つまり、ちょっとした催眠術をかけるのだ。実際に、不眠症が治ったという報告例もある。
 男の元にはたくさんの感謝の手紙が届いた。自分の研究成果が感謝という形で評価されるほど、研究者冥利に尽きるものはない。男は紛れも無く幸せだったであろう。

 しかし、中にはクレームもある。装置の利用者で、眠りから覚めなくなったとの報告があった。男は実際にその利用者の元に行き、何が起こっているのかを調べた。
 真相は実に単純なものだった。利用者が「眠りから覚めない自分」を想像したのだ。装置がそれを読み取り、脳に眠りから覚めないようにと働きかけた。それだけのことだった。どうすれば目を覚ますのかという問の答えも誠に単純で、眠っている人が眠りから覚めようと意識すればいいのだ。すべては自分の意志の問題である。
 男は科学者であって、医者ではないが、眠りから覚めない人に点滴を打つように指示をした。脳に何ら影響はないが、身体は栄養を摂らないと機能しない。男は十分適切な対応を取ったのだが、利用者の関係者からは「なんで人を植物状態するような発明をしたんだ!」と罵声を浴びせられた。
 日に日にクレームは増えていく。眠りから覚めない人以外にも、装置がないと眠れない、所謂中毒状態の利用者の報告も聞く。もちろん感謝の手紙もたくさん送られているのだが、男の視界にそれは入らなくなっていた。

 男は考えた。何故自分が文句を言われなくてはならない。
 好きな夢を見せる装置に魅せられた人々。彼らは自ら望んで眠りから覚めないのだ。夢に救われたのか、それとも巣食われたのか。しかし寝ている人々は間違いなく幸せなのである。それは脳が証明してくれる。
 ただ、周りの人はそうはいかない。自分の都合だけで、その人を起こそうとする。つまり、夢を見る幸せを奪う。しかも脳に働きかける装置を利用している以上、眠りから無理矢理覚ますという行為は、結果としてその人を永遠の眠りに就かせることに繋がる。実際にそのような報告は何件かある。
 そもそもどんな道具も危険性を孕むものだ。例えばTVゲーム。根を詰めてやれば身体に害があるのは当たり前だが、適切な時間で遊べば実に楽しいものである。悪影響を及ぼす境界を見極めるのは利用者だ。子供がゲームにハマったからといって親が会社に文句を言うのはお門違いだろう。


 自分は……悪くない。


 しかし事件は起きる。装置が原因である著名人が亡くなった。今までの被害者は一般人ばかりであったが、著名人になると話が違う。悲しむのはその著名人の身内だけではない。世界だ。
 男は世界を敵に回したのだ。

 男はほとんど居場所を失った。どこへ行っても殺人犯扱い。装置は麻薬のように取り扱われた。今までの研究の評価も失った。手紙もクレームしかない。男の精神は何かに蝕まれ、今にも壊れそうだった。
 それでも、男が男でいられたのは彼女がいたからであろう。彼女はどんな時も、男を受け入れ、励ました。
 そして、彼女の提案で、一度人目のつかない場所へ行き、ほとぼりが冷めるまで静かに暮らすことにした。

 男は引っ越した後も研究を続けた。自分の考えに背くことになるが、他人の夢に干渉できるための装置を開発しようと試みた。
 一方、彼女はこまめにネットやテレビを見て情報を仕入れた。愛する男がちゃんと評価されるよう願いながら、現実を見据えた。男の風当たりは強く、それを受け止めるのは大変辛く、困難なものであったであろう。




 そして、彼女は夢の世界へと落ちていった。




 男はそれでも研究を続けた。続けるしかなかった。
 時々彼女の容態を確認しつつも、残りの時間はすべて研究に捧げた。それは、本来なら彼女に捧げるべき時間だったのかもしれない。


 やがて、夢の干渉装置が完成した。




 しかし、世界は変容していた。


 今や夢を見るための病棟が存在している。現実の夢を掴むことを諦めた人々が、夢の世界で夢を掴む。
 特に富裕層の人間が眠りに就いたため、貧困層にも職が手に入り、現実を生きるものは生き生きとしている。中には、腐敗した政治家がいなくなったと喜ぶ者もいる。一部では男を神と崇めるものもいた。




 ……なんだ、みんな幸せじゃないか。




 男に残された選択肢は三つ。
 彼女の欠けた世界で、科学者として、神として生きるか。
 自らが作る夢の世界で、彼女と再会し、夢の中に埋もれるか。
 自分のエゴを優先させ、彼女の夢を干渉し、元の世界で元の居場所を作り直すか。


 答えはとっくに決まっていた。
 夢と現実の世界を翔けるために、男は装置を手に取り、彼女のもとへと駆け出した――――
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プロフィール

ねっしー

Author:ねっしー
個人サークル『Next Nexus』で活動(予定)
元『それは割れません。』
絵描いたり、小説描いたり、数学やったり、日常のどうでもいいこと綴ったり。


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