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数学科ガイドマップ

2016.03.18 17:53|カテゴリ:数学コメント(0)

Q.数学科って何の勉強をするの?

A.役に立たないこと



 「高校から大学へ進むと、生物は化学に、化学は物理に、物理は数学に、数学は哲学になる 」という言葉を誰しも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。が、高校生で哲学の勉強している人なんてそうそういないので、「大学での数学って結局何を勉強するんだろう?」と、わからないまま大学生になる人がほとんどではないでしょうか。実は、私もその一人でした。

 というわけで今回は大学の数学についてそこまで詳しくない人たちに向けて、大学の数学についてそこまで詳しくなかった私がどんなことを学ぶのか、簡単に説明していきたいと思います。




◎数学は哲学なの?

 大学の数学を高校の数学と同じものだと考えて数学科に進んでしまうと、だいぶ苦労することになります。実際、高校数学は好きだったけど、大学数学は嫌いという人は結構目にします。

 高校数学が好きな人というのは、計算が得意だったり、問題を解くためにあれこれ考えて「わかった!」という瞬間に喜びを感じる、パズルを解くことが好きな人とまとめることができるかもしれません。

一方、大学に入ってからの数学では、数や図形といった対象の性質を抽出してどんどん抽象化していき、定められた条件の下でどのようなことが言えるのかを調べていきます。結果として高校ではメインだった計算の比重が軽くなり、パズルを解くことよりも、パズルを組み立てるための土台を整備することに力を注ぎます。
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 同じ「パズル」という言葉を用いましたが、大学でのパズルのほとんどが、数字ではなくロジックによって成立する抽象的な対象になっています。数的要素が消え、論理で物事を組み立てていく様が「哲学」と表現されるのでしょう。数学が哲学なのかと問われると、それはなんだか違う気がしますが、そのように形容されるのは何となく理解できます。ですが、数学を学んだ人間としては、数学を厳密に扱うために道具として論理を持ち出しているだけで、数学は数学以外の何物でもありません。
 他の理系科目であれば、高校で習ったことがそのまま土台となり、その上に数学を始めとする道具を用いて新しい理論を築いていきますが、数学はひたすら土台を整備し直します。高校生で解けなかった難しいパズルが解けるようになるまでにはかなりの時間を要します。実際のところ、「これ、本当に役に立つの?」と疑いながら土台を整備するけど、パズルを解く楽しさが見出せないので、土台ができる前に数学から去っていく人がほとんどですね。しかし一方で、高校の頃は数学が苦手だったけど、大学の数学は計算があまりないから勉強していて楽しい!と思う人もいます。


◎土台オブ土台

 では、具体的に大学で学ぶ数学の内容を見ていきましょう。
 大学での数学は大きく3種類に分けることができます。代数・解析・幾何の3つです。ざっくりと3つ違いを説明すると、

代数…「数」を扱う分野
解析…「動」を扱う分野
幾何…「形」を扱う分野


と言うことができるでしょう。学部の授業では、これらの3つの分野についての基本的な知識を身につけることが目標になります。が、留年率もバカにならない数学科、そう簡単にはこれらが理解できるようにはなりません。まずは「線形代数学」「微分積分学」「集合と位相」の3つを理解することから始まります。
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・線形代数学
 ベクトル空間や一次変換について学ぶ学問。具体的には行列や行列式について計算したり、行列と連立一次方程式についての対応を学びます。要は行列。多くの理系学部学科で初年度から履修することもあり、他の理系科目はもちろん、経済学といった具体的数値を扱う多くの学問へ応用されます。
 数学科でなければ、とにかく計算ができることが大切になりますが、数学科を目指すのであれば、ベクトル空間を始めとする様々な空間についても理解する必要があります。が、学部1年程度の講義ですべてを理解するのは無理でしょう。先の勉強をして躓いたとき、またここに戻って勉強し直し、そうして線形代数への理解を深めることになります。

・微分積分学
 文字通り、微分と積分について学ぶ学問。他にも、高校で曖昧だった極限や連続性といったものを厳密に定義し直していきます。ε-δ論法で躓く人は数知れず……。線形代数と同様、多くの理系学部学科で初年度から履修し、あらゆる場面で計算の道具として登場してきます。学習が進めば、今までの議論を一変数から多変数へと拡張し、様々な関数が扱えるようになります。
 THE・計算といった学問ですので、大学の数学が得意な人でも微積には苦手意識を持っていることも。

・集合と位相
 他の数学を学ぶための基本言語を学ぶ場、と言うのがふさわしいでしょうか。数学の対象は、基本的に集合とその間の写像によって記述されます。高校数学では“近い・遠い”が明確に定義されている距離空間を扱っており、写像の連続性も微分積分学で“近い点同士を近い点に移す”と自然に定義されています。距離空間というのはめちゃくちゃ扱いやすい構造をしており、連続を定義するにも情報過多なくらいです。では、連続を定義するために必要最小限の数学的構造とは何であろうか、と考えたときに登場するのが位相という概念です。おそらく、学部2年でこの科目を履修する大学が多いでしょう。
 線形代数や微積分と異なり、抽象的な概念の理解と論証がメインになります。死ぬ人は死にます。


 これら3つの基本的な知識、そして考え方は、代数、解析、幾何のどの分野に行っても登場します。従って、これらを十分に習得できないと、それ以降の数学がまったくわからなくなるという恐ろしい状況に陥ってしまいます。とは言え、よほどの天才でない限り、一度の学習で完璧に身に付けることは不可能ですので、何度も反復して学習するのが大切になります。




◎代数・解析・幾何の中身

 土台の土台ができたところで、今度はその上に乗せるものについての説明をしましょう。

 学部での講義を中心に説明するつもりですが、ここからは大学のカリキュラムによって教える内容が微妙に違ったり、さらには大学教授によっても教える内容がだいぶ変わってくるので、おそらくここで書く内容は全てを網羅していないと思います(むしろ余分なものは書かないようにしています)。分野名が講義名とも限りませんし、そこらへんの分類も大学によってまちまちです。ですが少なくとも、代数、解析、幾何それぞれの全体像がわかる程度には記述していきます。



~代数~
 四則演算をそれぞれ一般化していきます。他の分野と比べてかなり抽象的なものを取り扱いますが、最終的には整数問題を始めとする具体的対象を扱うことになります。が、そこまでたどり着くための道のりは長い……。

・群論
 足し算を一般化する学問。世の中には群の構造を持った対象が多く存在し、物理や化学の分野でも応用されます。しかし、集合と位相以上に抽象的になるので、他学科から軽い気持ちで群論の講義を取って、脱落していった人たちをたくさん見ました(笑)。

・環論
 環は群に積の構造を入れたものです。これだけ聞くと、環論は群論の延長のように思えますが、蓋を開けてみるとぜんぜん違います。積が定まることにより、素因数分解の一般化にも繋がり、掘り下げていけば数論への寄与も大きくなる分野となります。

・体論
 四則演算が入った対象を取り扱う学問。元々は5次方程式の一般的な公式がないことを証明するために体の概念が導入されました。実際に、ガロア理論を用いてこのことを証明できるようになります。



~解析~
 他の理系科目でもバリバリの応用を見せつけるイケメン。道具として使うだけならさらっと習得できるが、ちゃんと理解するなら級数や収束の厳密性を詰めていかなければなりません。

・微分方程式
 色々な自然・社会科学のモデルを考えると姿を現す微分方程式。ただ、実際に解ける微分方程式はそこまで多くないため、とにかく「解は存在するのかどうか」と「その解はただ一つだけなのか」ということを調べます。

・フーリエ解析
 実数値関数を波の形(sinとcosの和)に分解する、応用系必須の学問。形を変えて、様々なところで目にするヤツです。計算自体はただの覚えゲー。収束の厳密性を詰めようとすると長い旅が始まります。

・ルベーグ積分
 測度論を導入することで、今までの積分(リーマン積分)で扱えなかった関数の積分を考えることができます。このルベーグ積分では、至るところで不連続な関数も扱えますし、関数値として無限大をとるところがあっても問題ありません。

・複素解析
 文字通り、複素数を扱った解析。複素関数は実数関数にはない強い性質を持っており、様々な分野で応用されています。特に、リーマン予想を解くために発展した背景もあり、解析的整数論ではかなりお世話になっています。

・関数解析
 特定の関数を集めてベクトル空間を形成し、そこにある種の位相構造を入れてそこで成り立つ性質を調べていきます。無限次元版の線形代数と捉えるとわかりやすいでしょう。関数解析を学ぶと関数を有機的に捉えることができるようになり、他の解析学の理解が深まります。

・確率論
 魔法の言葉「同様に確からしい」を排除する学問。確率空間を考えるにあたって、測度論やルベーグ積分、関数解析といった知識が必要となってきます。教職課程の最大の敵(数学の教員免許取るのに必修であるくせに難しすぎる)。



~幾何~
 ユークリッド幾何学から抜け出し、様々な図形を取り扱います。分野によって公理系が大きく変わり、同じ「幾何学」という名前がついていても中身はまったくの別物だったりします。物理屋さんもわりとお世話になる分野。

・微分幾何学
 色々な図形上(多様体)での微分を考える学問。学部の授業では「曲線と曲面」と「多様体」について学ぶことになります。図形の直感的理解だけではなく、数値等用いて論理できっちりと公理系を組み立てていきます。計算の道具として「ベクトル解析」も登場し、なかなか計算がエグかったり。

・位相幾何学

 コーヒーカップとドーナツが一緒ってヤツです。これも直感的ではなく、数学の言葉を用いて厳密に分類していきます。ドーナツ程度であれば想像に容易いですが、実際はもっと複雑な図形も現れ、頭の中で図形をイメージするのがどんどん困難になっていきます。ただ、幾何が得意な人はちゃんと図形がイメージできるとかどうとか。


 以上、これらの内容を数学科では3年生までに学びます。




◎4年生は何するの?

 4年生では研究室に所属し、自分の好きな研究に励むことになります。一般的には自分が勉強したい本を一冊選んで、それについてゼミを行う形になるでしょう。
 ここから先の勉強は様々な分野の知識が絡んできます。例えば私は「解析的整数論」を専攻していました。基本的に数論は代数系に分類されるわけですが、使う道具はフーリエ解析に複素解析とバリバリ解析を用います。逆に幾何とか苦手で複素解析を専攻していた友人は院生になって「幾何から逃げられなくなった」と言っていました。

 では、具体的に4年生ではどのようなことが勉強できるのか……は範囲が広すぎてとてもではないですが網羅し切れません。そもそも私が他の分野についてさほど詳しくないです。実際、院生にもなると、同じ系統の分野でも他の人が研究している内容はさっぱりわからないものです。それほどまでに数学は多様化していきます。逆に言えば、院生で一つの分野に関してしっかり研究すれば、それについては指導教官よりも詳しくなれることもできるわけです。

 しかし残念ながら、学部は土台作りであり、4年生で何らかの結果を出すというのは難しいように思えます。従って数学科では他学科とは異なり、学位論文を書かなくても卒業できる大学も多くあります。学位論文が書けるほどの知識がないというのが正しいでしょうか。単純に数学が難しいという理由もあるかもしれませんが、その根本には理学と工学の違いがあります。
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 古い常識というものはどんどんアップデートされていきます。ガラケーだって気付けばスマホに取って代わるものです。携帯を開発するにあたって、以前流行ったからといってガラケーの仕組みを理解するのに全力を注ぐ人はいないでしょう。いきなりスマホについての研究・開発を行えば良いのです。このように、工学は常に最先端の技術を学ぶべきであり、大学も最先端を提供する場となります。
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 しかし理学、特に数学はそのようにはいきません。いきなり最先端の知識を知ろうとしても、何もわからず、死にます。古い知識の上に新しい知識が積み重ねられるのです。同時に、新しい成果を出すためには他の学問よりも学ばなくてはならないことが多いのです。
 ですので学部では、今までの学者たちが残した研究の成果をなぞるだけで精一杯なわけです。物足りない、と感じた人は大学院に進み、数学の研究を続けることになります。実際に、数学科の人は多くの人がそのまま大学院へと進みます。




◎数学科生のお勉強生活

 大学での勉強の仕方は人それぞれです。学部の数学科生は大きく分けて4通りに分類できるかと思います。

1.講義に出ないで図書館とかで勉強しているヤツ(天才型)
2.講義に出て勉強するヤツ(真面目型)
3.講義に出るも、講義の内容がまったく頭に入ってこないヤツ(バカ)
4.講義も出ないで単位を落とすバカ(バカ)


 残念ながら、バカは留年します。当然です。

 注意しなければならないのは3番目。高校とは違い、講義に出たところで必ず単位がもらえるわけではありません。大学はあなたの面倒をきっちり見てくれるわけではないのです。あくまで大学は勉強の手段を提供する場です。講義を聞いてわからなければ、自分で勉強し直すなり、質問するなりして理解することで、ようやく自分の生きた知識となるのです。それがわからずに、講義に出て勉強した気になっている連中は、死にます。

 1,2のどちらがいいかと言われれば、私は2をオススメします。自分の勉強したいこと、数学の全体像が掴めているのなら1のスタンスでガンガン進んで行けばいいと思いますが、そうでないのであれば、カリキュラム通りに勉強していくのが無難です。

 すると3年までは色々と授業を取るので、それなりに忙しい日々が続きます。しかし、4年になると研究室所属となり、今までの生活がガラッと変わります。この頃には卒業に必要な講義はだいたい取り終わっているでしょうから、基本的に、ゼミ準備→ゼミ→ゼミ準備→ゼミ→ゼミ準備→……というサイクルになります。他学科の実験系であれば、実験装置の使い方を覚えたり……みたいなことはあるようですが、もちろん数学科にはそんなものありません。人にも依りますが週1で大学に行けばOKです。とは言え、始めはゼミの準備に「時間が足りない!」と苦しむ日々が続きますが、慣れてくると時間に余裕が出てきます。数学大好きの皆さんはさらにゼミを入れて自らを追い詰めるドM行為に走りますが、私はそんなことせずに趣味の時間にあてました。ここで声を大にして言っておきましょう。数学科は勉強さえできれば、自由な時間がたくさんできる

めちゃくちゃ楽な学科です。





◎で、役に立つの?

 冒頭にも書いた「数学科って何の勉強をしているのか?」という問いは非常に答えづらいものです。

 第一に、学科レベルでは土台となる道具の勉強ぐらいしかできないので、自分でも何の勉強をしているのかよくわからないのです。実際は他の分野でかなり役立つ数学を学んでいても、数学科生自身はその有用性を知る機会はなかなかありません。

 第二に、専門的な内容を勉強し始めても、それを正確に伝えるためには相手にもそれなりの数学的知識を要求します。院生になっても、お互いにどんな研究内容をしているか話すには、それなりに大変なのです。数学を勉強していない人にわかりやすく話そうとすると、どうしても厳密性を捨てる必要があり、数学科生としてはそれが許せなくて、結局難しくて伝わらない話をしてしまう……。これだから数学科にはコミュ障がたくさんいるのですね!(違う)

 第三に、具体的な話ならともかく、抽象的な話をされると人は「それは何の役に立つの?」と疑問を抱いてしまいます。数学ほど他の分野に貢献している学問はないと思いますが、自分の研究が何の直接役に立つかと言われると、答えは「ノー」です。科学のための科学である基礎研究をどのように捉えるかという問題にもなるわけですが、ぶっちゃけ聞いている側はそのようなことを求めていません。たぶん。きっと。かつてアメリカのフェルミラボの所長であったウィルソンは、大きい加速器を作りたいと提案したとき、議会から「それは国防の役に立つのか?」と質問されたわけですが、そのとき彼は「国防には直接役立ちませんが、我が国を守るに値する国にするのに役立ちます」と答えたそうです。これに見習って「あなたが勉強している数学が何の役に立つの?」と聞かれたら「この研究でフィールズ賞を受賞し、日本をより価値のある国へと作り変えます」とぐらい言ってやりましょう。私は責任を負いません(笑)。



 長くなりましたが、自分で今までどんなことを勉強してきたおさらいをしつつ、これから大学生になる人に向けて大学での数学をまとめてみました。これからの勉強のための指針となれば幸いです。

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Author:ねっしー
個人サークル『Next Nexus』で活動(予定)
元『それは割れません。』
絵描いたり、小説描いたり、数学やったり、日常のどうでもいいこと綴ったり。


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