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桜の花びらが舞う季節に

2016.03.19 01:13 |カテゴリ:短編コメント(0)

 そろそろ桜の花が咲くということで、咲くことに戸惑う、恋のお話を。

(1400文字程度)

桜の花びらが舞う季節に


 色を重ねる。
 何度も重ねる。
 そして、そこに自分だけの桜を表現する。
 キャンバスに描かれるのはまさに自分の心、なのだろう――。



 僕はこの春、晴れて大学生となった。勉強は苦ではなかった。迷ったのはどの大学を受験するかということだったけど、決め手となったのは、この桜並木だった。絵が好きな僕にとって、この風景は何としても描いておきたかった。他の人からしてみれば、くだらない理由に思えるかもしれないが、僕にとっては十分過ぎる理由だ。
 緩やかに流れる時間の中で絵を描いていると、聴き慣れた声がした。
「おー。やっぱりここにいた」
 高校で同じクラスだった女子だ。彼女もどうやらこの大学に合格したようだ。
「久しぶり。卒業式以来かな?」
 黙々と絵を描きながら、そんな他愛も無い返事をする。その後は、お互いに合格おめでとうとか、どこの学部?とか、そんなありふれた会話が交わされた。しばらくして、ふと彼女が呟く。
「ねぇ、どうして私がこの大学を目指したと思う?」
 筆が止まる。僕はその問の答えを知っていた。
「……桜が綺麗だから?」
 だから、僕はあえて間違った答えを口にした。そしてぎこちなく、また筆を動かす。
「アンタじゃないんだから、そんなわけないでしょ。……アンタがこの大学目指すって言ったからよ」
 彼女の声は震えていた。でも、僕には返す言葉がなかった。だから黙って絵を描いていた。

「好き……なの」

 彼女が言葉を繋げる。再び筆が止まった。勇気を出して発した彼女の言葉。素直に嬉しかった。でも、僕は……彼女のことが好きなんだろうか? 興味はある。綺麗だし、性格も明るくて一緒にいると楽しい。でも、僕の好きは彼女の好きと比べるとずいぶん小さなものに感じてしまう。もし、僕が好きだと言えば彼女と付き合うことになる。でも、彼女の好きに応えられないことの罪悪感で自分が潰れてしまうような気がした。
「誰かに好きになってもらえるほど僕は立派な男じゃないよ」
 だから誤魔化す。思えば高校の頃からそうだった。彼女の気持ちに気づいていないフリをしてきた。それが彼女のためだと思って。
「別にそんな答えは求めてないの。私が知りたいのはね、アンタが私を好きか嫌いかってこと」
 迫ってきた彼女は、泣きそうな顔をしていた。
「好きか嫌いかで言えば、好きだけど……」
 彼女の迫力に負けて出た曖昧な「好き」という言葉。ふと自分が情けなく思えた。しかし、少しの安堵からか、彼女は攻撃の手を緩めなかった。
「うん、良かった。でもわかってる。アンタが何考えているか。だから、命令ね。私が傷つくようなことは言わないこと。その代わり、私がアンタをメロメロにしてやるからねっ」
 完全にやられたと思った。彼女は僕以上に僕の性格を理解していたようだ。もはや「うん」と頷くしかなかった。とは言え彼女も自分の科白に恥ずかしくなったようだ。
「だ、だから、その……わ、私のこと、もっと好きになってくれると嬉しいな……」
 耳元で囁かれるささやかな願望。顔は真っ赤。照れを誤魔化すために言葉を続ける。
「ま、まぁアンタも景色ばっか描いてないで、たまには人物も描きなさいよ。ほら、私がモデルになってあげるからさ」
 そんな彼女を可愛いと思う僕がそこにはいた。



 一人の女の子がキャンバスに新たな彩りを加えていた。
 ふと思う。
 桜の花びらがすべて落ちてしまえば、僕も恋に落ちてしまうのだろう、と。

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プロフィール

ねっしー

Author:ねっしー
個人サークル『Next Nexus』で活動(予定)
元『それは割れません。』
絵描いたり、小説描いたり、数学やったり、日常のどうでもいいこと綴ったり。


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